[QuickSight]Standard EditionとEnterprise Editionの機能と料金について比較してみた
こんにちは、洲崎です。
QuickSightを利用する際、「Standard Edition」、「Enterprise Edition」、「Enterprise Edition + Q」の3つの選択肢があります。
一見、Enterprise Editionの場合は名前から推測して高そうと思われるかも知れませんが、使い方によってはEnterprise Editionの方が安くなるケースもあります。
今回はQuickSightの各Editionの機能と料金について整理してみました。
最初にまとめ
- 閲覧者と管理者(作成者)の権限を分けて管理したい場合は「Enterprise Edition」
- QuickSightのIP制限や保管中のデータの暗号化、Active Directoryへの接続を行いたい場合は「Enterprise Edition」
- ユーザーの権限管理を必要とせず、データ分析やダッシュボードの検証を行いたい場合は「Standard Edition」
- 分析からデータの予測を行いたい場合は「Enterprise Edition + Q」
- (2023/9/25時点で東京リージョンは未対応)
機能
まずは、Enterprise EditionとStandard Editionで比較します。
(Enterprise Edition + Qは自然言語での予測機能をプラスした形になるため、比較表では割愛します)
機能 | Enterprise Edition | Standard Edition |
---|---|---|
無料トライアル作成者 (30 日間) | 4 | 4 |
SPICE 搭載容量 | 10GB/ユーザー | 410GB/ユーザー |
閲覧者 | ⚪︎ | |
組み込みダッシュボード | ⚪︎ | |
スプレッドシート、データベース、データレイク、ビジネスアプリケーションへの接続 | ⚪︎ | ⚪︎ |
AutoGraph によるデータ分析 | ⚪︎ | ⚪︎ |
データアクセス用のダッシュボードの公開 | ⚪︎ | ⚪︎ |
SAML または OpenID Connect によるシングルサインオン | ⚪︎ | ⚪︎ |
ウェブおよびモバイルアクセス | ⚪︎ | ⚪︎ |
詳細情報へのドリルダウンおよびフィルターのカスタマイズ | ⚪︎ | ⚪︎ |
AWS CloudTrail による監査ログの有効化 | ⚪︎ | ⚪︎ |
メールレポート | ⚪︎ | |
プライベート VPC およびオンプレミスのデータへのアクセス | ⚪︎ | |
行レベルのセキュリティ(データセットのアクセス制限) | ⚪︎ | |
SPICE データの 1 時間ごとのリフレッシュ | ⚪︎ | |
保管中のデータの暗号化 | ⚪︎ | |
Active Directory への接続 | ⚪︎ | |
Active Directory グループの使用 | ⚪︎ | |
共有フォルダ | ⚪︎ | |
カスタマイズアクセス制限 | ⚪︎ | |
API | ⚪︎ | |
マルチテナントの名前空間 | ⚪︎ | |
機械学習インサイト | ⚪︎ | |
プログラムによるダッシュボード作成用テンプレート | ⚪︎ | |
ダッシュボードカスタマイズのテーマ | ⚪︎ | |
SPICEで10億行のデータセットのサポート | ⚪︎ | |
IPアドレス制限 | ⚪︎ |
Enterprise Editionの方ができる機能がとても多いですね。
比較表のみだとどのような機能なのか分かりづらいと思うので、Enterprise Editionのみ利用できる機能について深掘ります。
Enterprise Editionのみで利用できる機能
閲覧者
「作成者」と「閲覧者」で役割を分けてユーザーを作成することができます。
「閲覧者」というユーザーはQuickSightの管理やレポートの作成はできませんが、QuickSightの環境の中でダッシュボードを閲覧し、データをドリルダウンし、画面上に表示されたフィルター設定を変更し、CSV形式でデータのダウンロードが可能なユーザーです。
ユーザーにダッシュボード等の編集権限を与えずに、閲覧用の権限のみを付与したい場合は、Enterprise Editionの「閲覧者」を利用します。
料金について、1セッション(ログインしてから30分)あたり$0.3かかり、最大で$5/月の為、Standard Editionの料金($12/月、$9/年)より安く利用できます。
組み込みダッシュボード
組み込みダッシュボードとは、QuickSightで作成したダッシュボードを外部WEBサイトへ組み込みできる機能です。
ダッシュボードだけでなく、ビジュアル(分析)も組み込むことができます。
メールレポート
QuickSightのダッシュボードの内容をEメールに送ることができる機能です。
送信スケジュールとタイムゾーンを設定し、定期的にレポートをEメールで送信することができます。
プライベート VPC およびオンプレミスのデータへのアクセス
QuickSightはインターネット経由でさまざまなデータソースと接続するサービスですが、Enterprise EditionではVPC上のリソースに対してプライベートネットワーク経路で接続することができます。
方法としては、VPCのサブネットにQuickSight用のENIを作成します。
行レベルのセキュリティ(データセットのアクセス制限)
QuickSightのデータセットで、ユーザーごとでアクセスの制限をかけることができます。
特定のユーザーに、限られたデータのみアクセスしたい場合などに有効です。
SPICE データの 1 時間ごとのリフレッシュ
QuickSightにはSPICEというインメモリ型の高速データベースが内蔵されています。
SPICEに取り込むことで、クエリ速度の向上とデータソースへの負荷軽減につながります。
このSPICEを1時間ごとにデータセットをリフレッシュすることができます。
また、リフレッシュする際、増分更新も可能です。
保管中のデータの暗号化
SPICE内で保管されているデータはAWS マネージドキーによるハードウェアブロックレベルの暗号化を使用して暗号化できます。
SPICE 以外で保管されているデータは、Amazon マネージド KMS キーを使用して暗号化することができます。
Active Directory への接続,Active Directory グループの使用
AWS Managed Microsoft ADを利用して、Active Directoryに接続することが可能です。
共有フォルダ
共有フォルダを利用することで、ユーザーに対して組織別にダッシュボードの閲覧や編集を管理することが可能です。
カスタマイズアクセス制限
「閲覧者」ではなく、「作成者」に対して、細かく権限管理できる機能です。
例えば、Aさんはデータソースもデータセットも作っていいけれど、Bさんは分析を作るだけにしたい(データソースやデータセットは編集させたくない)という場合の制限を行うことができます。
API
文字通り、QuickSightに対してAWS CLIなどでAPI操作ができる機能です。
マルチテナントの名前空間
1つのAWSアカウントで作成できるQuickSightアカウントは1つのみですが、名前空間を利用することでQuickSightアカウント内に、分離された環境を複数作成することが出来ます。
機械学習インサイト
機械学習 (ML) と自然言語 (NL) 機能を利用して、データから異常検出、時系列予測、ストーリーの自動生成などを行うことができます。
プログラムによるダッシュボード作成用テンプレート
QuickSightのダッシュボードを開発したときに、別のAWSアカウントへ作成した分析を配布したいときに、テンプレート化して配布することができます。
ダッシュボードカスタマイズのテーマ
QuickSightのテーマ機能で、ダッシュボードの背景の配色、データの色のグラデーション、レイアウトオプションを変更することができます。
SPICEで10億行のデータセットのサポート
Standard Editionと比較して、大きなSPICEデータセットをサポートできる様になっています。
- Enterprise Edition:最大 5 億行(または500 GB) => 最大 10 億行 (または 1 TB)
- Standard Edition:最大 2,500 万行 (または 25 GB)
IPアドレス制限
QuickSightへのアクセスをIPアドレスで制限できます。
Enterprise Edition Qで利用できる機能
Quicksight QはBIツールであるAmazon Quicksightを自然言語にて操作できるサービスです。
例えば検索窓に「前年度との売上の比較を出して」と書くと、AWSがその文の内容を分析し、前年度と今年度の売上を比較する棒グラフを表示する、といったサービスです。
まだ東京リージョンにきていなかったり、言語が英語だったりで、今後に期待のサービスです。
料金
次に、Standard Edition、Enterprise Editionそれぞれの料金を比較してみます。
Edition | 月契約 | 年間契約 | 備考 |
---|---|---|---|
Standard Edition | $12 | $9 | |
Enterprise Edition[作成者] | $24 | $18 | |
Enterprise Edition[閲覧者] | 1セッション(ログインしてから30分)あたり$0.3かかり、最大で$5/月 | ||
Enterprise Edition Q[作成者] | $34 | $28 | QuickSight Qが利用可能 |
Enterprise Edition Q[閲覧者] | 1セッション(ログインしてから30分)あたり$0.3かかり、最大で$10/月 QuickSight Qが利用可能 |
作成者でみると、Standard EditionよりEnterprise Editionの方が2倍料金が発生します。(Qだと+$10)
一方、Enterprise Editionの閲覧者の場合は最大で$5/月の為、Standard Editionより安いです。
以下のようなユースケースにおいては、Enterprise Editionの方が安くなります。
ユースケース
管理者が1名、閲覧者が5名の場合で考えてみます。
Standard Edition
$12 * 6 = $72/月
(全てのユーザーがQuickSightの設定からダッシュボードまで利用できます)
Enterprise Edition
作成者:$24 * 1 = $24/月
閲覧者:$5(最大) * 5 = $25/月
$24 + $25 = $49/月
上記の通り、用途によってはStandard Editionを利用するよりもEnterprise Editionの方が安く、機能も豊富に利用できます。
最後に
QuickSightのEnterprise EditionとStandard Editionを比較してみました。
利用するユーザーが1人(権限管理をしない)だったり、分析やダッシュボードの検証が目的なのであればStandard Editionでも問題はないと思います。
一方、本番運用するとなると複数のユーザー管理が必要だったり、Enterpriseの方が機能が豊富だったりするので、そちらを利用する方がよさそうです。(使い方によってはStandard Editionより安い可能性もあります)
ではまた!コンサルティング部の洲崎でした。